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海洋教育教材

海洋教育教材について

「海洋教育パイオニアスクール」(助成元:日本財団・東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター・笹川平和財団海洋政策研究所)プロジェクトで制作したデジタル海洋教育教材です。
「海の無い場所での海洋教育」を円滑に実現するために東京都八王子市の由井中学校区の小中学校(小学校3校、中学校1校)からの依頼をいただいて作成したものです。

小学校4年生から中学校3年生まで、公教育で使用していただくことを想定して作成されましたが、上記理由で一部八王子市での実施を前提として作成されている個所がありますのでご注意ください。
豊富な動画・画像資料を用意しただけでなく、各学年とも授業進行表、学習指導要領上の位置づけ、指導案例などを掲載し、教科教育における正課として利用いただけるように配慮しております。
どの教材も教育目的であれば無料でお使いいただけますが、出典元として「一般社団法人 葛西臨海・環境教育フォーラム」を掲示してください。

※営利目的での使用や教育目的の利用でも無断加工は厳禁です。

八王子由井中学校区
平成30年度作成 海洋教育パイオニアスクール教材

はじめに

「海のない八王子における海洋教育」における本教材の意義
荒井 雅則 (八王子市立由井中学校 校長)

 八王子市で小中一貫校に指定されている、由井第二小学校・由井第三小学校・片倉台小学校の3小学校と、拠点校となる由井中学校の計4校で、海洋教育パイオニアスクールプログラムの助成を受け、「海のない八王子における海洋教育」について研究開発と実践を進めてまいりました。

 本研究の特色として挙げられるのは以下の通りです。
・授業の基本となる教育課程を変更することなく進めること
・理科だけでなく社会科などまで含めて海洋教育につなげること
・地域の特色、地域性も利活用すること
 などです。これにより現場に負担をかけることなく導入できるプログラムが開発されてまいりました。

 そしてこの度本教材が完成したことで、専門家ではない学校の教員が一定以上のクオリティで授業を実施することが可能となりました。加えて、海洋というコンセプトで小中がつながることになる点で意義深いものであると考えております。
 学校運営協議会をはじめとする地域からの強い期待もいただいております。由井中学校区の4校が「海の無い場所での海洋教育」のモデルケースとなるよう、本教材を利活用す ることでこれからも継続的に取り組んでまいります。

明星大学理工学部総合理工学科
和田 薫 (明星大学教授(前由井中学校校長))

 現在、新学習指導要領の完全実施が小学校では2020年度から、そして中学校では 2021年度から計画されている。新学習指導要領では、「何ができるようになるか」を明確化し、現行の学習指導要領に比べて、目標を達成するための手段やプロセスを具体的に打ち出している。
 新学習指導要領の重点項目として挙げられている「理数教育の充実」として、理科でいえば、観察・実験を通じて科学的に根拠をもって思考する力をつけるために、実験・観察の必修化が図られ、次の 3点が挙げられている。
1. 自然の事物・現象についての理解を深め、科学的に探究するために必要な観察、実験などに 関する基本的な技能を身に付けるようにする。
2. 観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う。
3. 自然の事物・現象に進んで関わり、科学的に探究しようとする態度を養う。

 従来から実物に触れる観察や実験は、生徒の興味関心の育成はもちろん、知識・理解の向上に効果が大きかったことは明白である。新学習指導要領の示す方向性は理科教育においてより"本質的"になったといえる。すなわち、決められた時間内に体験活動やアクティブ・ラーニングを含めて実施するには、効率的な授業の展開と、1つの課題を通して、複合的に学びが出来るように、学校全体、ひいては小中連携したカリキュラム構成が求められる。

 『海洋教育パイオニアスクールプログラム~海の無い地域における小中一貫体制による海洋教育体制の構築と推進~』で開発された教材は、単なる新教材の開発に終わるのではなく、新学習指導要領の趣旨を達成しつつ海との関連を多様に学ぶプログラムになっている。
 その特色としては、以下のことがあげられる。
① 基本的に従来の授業内において実施できる授業としてプログラムされている。評価項目に対応した学習指導案がつくられており、いつでも授業に導入可能である。
② 日常の課題から海洋教育に取り組ませることで、理科・社会のみならず、ESD環境教育などを含めた発展的学習(アクティブラーニング含む)や総合学習(合科的学習) を展開できる。
③ 小中の教科等横断的学びとなっており、年齢に応じた科学的に根拠をもって思考する力をつけることができる。

 以上のように、本教材は従来のカリキュラムでは中々出来なかった内容の"観察・実験"を通して、新学習指導要領の実施にあわせて、理科教育の発展的な充実(小学校においては社会科含む)を図る教材となっている。

監修者のことば

海洋パイオニアスクール教材制作監修を終えて
一般社団法人 葛西臨海・環境教育フォーラム
代表理事 石丸 隆

 一般社団法人葛西臨海・環境教育フォーラムは、葛西臨海公園をベースとして参加体験型環境学習プログラムを実践する有志の集まりです。従来、葛西臨海たんけん隊の名のもとに主に江戸川区の小中学校に、海洋に関する出前授業を提供してきましたが、この度、八王子市立由井中校区の海洋パイオニアスクールのお手伝いをすることとなり、体験型授業のための教材作成をすすめてきました。

 海に囲まれ、海の恩恵に浴している我が国において、昨今、若者の海離れ魚離れが問題になっています。海に近い学校でも、多くの子どもたちは海で遊ぶ機会があまり無く、ゴカイやフジツボを知りません。まして、内陸部の子どもたちに海に興味を持ってもらうのは容易なことではありません。学校の授業は明確なテーマのもとにきちんとしたスケジュールの下で行われています。平成30年に改正された指導要領において、国土という観点から海が取り上げられることになりましたが、海の生き物や環境といったことは、全くはいっていません。それでは,どうすれば、海に興味を持ってもらえるのか、私たちは先生方と相談して、どういう単元に海との関係を加えることができるのかを検討しました。小中一貫した教育の中で,少しずつ海との関係を意識してもらうにはどうしたらよいか。

 まず、小学校4年生では社会科の単元「住みよい暮らし(2)わたしたちのくらしと水」のなかで、川と海を行き来する「アユ」は、ある時期にはほとんど見られなくなったが、川がきれいになったために帰ってきたこと。その理由の一つに、家庭から出る下水が処理場で浄化されるようになったことを知ってもらうことにしました。浄化槽中で汚れを分解している生きた微生物を顕微鏡で観察しました。水源から水道水→下水→処理場→川→海へと下った水が再び雨となって水源に降る水の循環の過程で、人間ばかりでなく、さまざまな生物が、さまざまな場所で関わっていることを体験してもらいました。

 5年生では理科の単元「受けつがれる生命(3):メダカのたんじょう」の中で、メダカの食べ物である池や田んぼの微生物の観察に加えて、海のプランクトンを観察することにより、それぞれの環境中における生物の食う食われるの関係について考えてもらいました。

 6年生では、理科の単元「わたしたちの地球(1):生物どうしのつながり」の中で、チリメンジャコの中に混じるさまざまな生物(チリメンモンスター)の観察・分類を通じて、海には多様な生物がいて、成⾧の過程で大きく形を変えるものがいること、食う食われるの関係も成⾧の過程で複雑に変化し、海の食物連鎖のなかでそれぞれが役割を持ち、人間の生活もそれらによって支えられていることを学びました。

 次に中学1年では、理科の単元「大地の成り立ちと変化:地層と堆積岩」の中で、珪藻化石の観察を実施しました。珪藻は海洋や湖沼の植物プランクトンであり、小学校5、6年では食物連鎖を支える生物として登場します。1億数千年前に現れた珪藻はガラス質の殻をもつため、化石として残りやすく、種の査定により地質年代や生息時の環境を知ることができます。一方、珪藻の有機成分は石油のもとでもあり、化石は油田開発の際の地層の診断にも使われています。

 2年では、理科の単元「動物の生活と生物の変遷:動物の体のつくりと働き」の中でブラックバスなどの外来魚の解剖を行いました。淡水魚も海水魚も体のつくりは同じであり、そのような説明の中で海との関係を認識させることができます。また予算の少ない中での実験ですので、駆除された魚の解剖はコストの点で有利ですし、また生物多様性や外来生物駆除の必要性を意識させるうえで有効です。

 3年では、理科の単元「自然と人間:自然界のつりあい」の中で、再びチリメンモンスターの観察を取り上げました。海の中の食物連鎖に加え、生産者―消費者―分解者とつながるエネルギーの流れを意識させることを目指しました。

 本教材は、主に私たちが出前授業を行う過程でまとめ上げたものですが、中学2年生向けのプログラムは、明星大学教授(前由井中学校⾧)和田 薫先生の指導のもとに、理科担当の先生方と葛西臨海たんけん隊のメンバーによって実施された際の教材に基づいています。それぞれの授業の実施状況に関しましては葛西臨海たんけん隊のホームページをご覧いただきたいと思います。

 私たちは、今後も体験授業のお手伝いをしていくつもりですし、また一部は先述の和田薫教授や、帝京科学大学古瀬浩史教授、麻布大学小玉敏也教授といった先生方に引きついでいただくことも予定しておりますが,本プログラムに参加された小中学校の先生方が独自に実施する際には、是非本教材をご利用いただきたいと考えています。

 最後に、海洋パイオニアスクールプログラムの実施にご尽力頂いた各参加校の校長先生および担当の先生方、また、実施に助力を賜った八王子市教育委員会、由井中学校区の学校運営協議会の皆様、さらには製作に際して無理をかなえてくださったウェブデザイナー丸山裕之さん、育児で多忙を極めておられるにも関わらず総合編集の重責を担ってくださった熊谷香菜子さんに感謝を申し上げます。

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